リーダーにとって最も大事なこととは?

理念が最も重要である。

これは、経営学のグルピーター・ドラッカーの言葉です。

私はピーター・ドラッカーが大好きで、

彼の哲学の虜になってはや20年が経過しようとしています。

今もドラッカーの言葉を信じ、その本質を実践で活かそうと試行錯誤しています。

 

彼は「非営利組織の経営」という名著を残しています。

その中で、非営利組織は、非営利故に「理念」が極めて重要だという事を言っています。

様々な書籍で「理念・ミッション」という話がでてきます。

でも何故でしょうか?今回はここから行きたいと思います。

 

何故、理念が重要なのでしょうか?そんなのどうでもいい。

単なるお題目はどうでもよくて、病院といえどもお金儲けが出来て、

「自分たちの給料が上がればいい、職員の幸せはお金である」

こう考えても不思議ではありません。

 

実はここだけの話、私自身も偉そうなことは言えず、

コンサルタント1年生の頃にどんな美辞麗句を並べても

意味がなくただ病院を儲けさせればいい、

それがコンサルタントに期待される事と思い込んでいました。(汗)

 

もちろん、お金儲けは大事ですし、お金がなければ職員も雇えません、

医療機器も買えないという事も事実です。

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間違ったリーダーシップの果てに

ですから、当然のことながらお金は大事と考えるのも無理のないことです。

しかし、少し考えてもらいたいと思います。

重要なのは医療機関にとつてお金を儲けるということが、

職員を導くための方向を示すことになるのでしょうか。

 

恐らく、医療機関の経営者がお金儲けだけを優先に考えているとしたら、

それはあまりに稚拙でしょう。

何故なら、医療ほど投資効率が悪い業種はないからです。

ハッキリ言って儲かりません。

人と設備に莫大な投資を必要として、その結果のリターンは極めて低い。

本当にお金目的の投資家であれば、金融や不動産に投資するでしょう。

誤解も甚だしいとはこのことです。

 

しかし、不思議なもので世の中事業が順調であればあるほど、

あらゆる企業が医療だ、福士だと騒ぎ始めます。

そして不景気になるととたんにその熱狂が冷めていきます。

 

日本がバブルの時に、大手メーカーはこぞって医療への参入を試みました。

しかし、バブルの崩壊とともに撤退していきました。

 

あの有名企業はなぜ失敗したのか?

最近では居酒屋チェーンのワタミが医療・福士への参入を行いました。

しかし、本業の居酒屋の経営悪化にともない、

医療・福士事業からの撤退を余儀なくされました。

「ワタミは2日、将来の中核事業の1つに据えていた介護事業を

損保ジャパンに210億円で売却」と報道されています。

 

実際にあった事をお話したいと思います。

ある時、私のところにあるメーカーが相談に来ました。

(現存するメーカーなので名前は公開できませんが)

その企業は地方の優良企業で、

主に工場やオフィスビルの設備関係を主力としていました。

ところが、日本の景気が停滞していて、ビルの着工件数が増えず、

また工場の設備投資も減ったために、事業が次第に頭打ちになってきました。

経営自体は悪くありませんでしたが、

これを契機に透析病院の設備関係に進出したいということでした。

 

そのメーカーの社長さんも真剣に私に協力を要請してきました。

私も協力を約束し、その会社の主たる職員の教育や、

マーケティングの支援を行いました。

最初は頑張って病院にも販売提案し、少

しずつ市場が拡大しはじめたその時です。

工場用の設備の市場が活況を帯び始めたのです。

 

そうすると、透析医療機関の市場など構っていられないという態度で、

透析医療機関への取り組みは放置されてしまいました。

現実的には透析医療からの撤退でした。

 

多くの透析医療機関、患者団体、学会を巻き込みながら、

進めてきたこの取組は一瞬にして水泡に帰すことになってしまったのです。

 

市場、取引先、職員の信頼が意味すること

恐らく、このメーカーは再び国内景気が悪化した時に

透析医療業界に再参入しようと甘いことを考えているかもしれません。

しかし、もはや2度と参入することは出来ないでしょう。

多くの医療関係者や患者団体の協力をとりつけてスタートしましたが、

まるで風見鶏のように態度をコロコロと変えてしまい、

人の信頼を裏切ることになってしまったからです。

 

透析医療からの撤退は、決して間違いではなく、

正解だったかもしれません。それは判りません。

但し、社内的には失敗でした。

多くの時間とコストがこの取り組みに費やされたからです。

多くの経営資源がリターンを生まないまま、浪費されてしまいました。

 

何故、このような失敗が起きたかのでしょうか?

それは、リーダーの方針がぶれたからに他なりません。

リーダーが舵取りを間違えると組織が大きければ大きいほど、

そのマイナスの幅は非常に大きくなります。

大きな方針を打ち出したのはいいですが、

それを短期間に否定してしまえば、職員はただ振り回されるだけです。

職員は心のなかで本当にこのリーダーについて行っていいのだろうか?

そして、ついてこうとは思わないのでしょう。

 

経済的な損失とともに、社外の信頼の低下、

職員からの信頼の低下など、

目に見えない損失が積み重なる結果になってしまいました。

 

経営方針は何故ぶれるのか?

経営の軸が明確かどうか?はこのように意思決定に大きな影響があります。

それでは、「ぶれない経営」「職員にとって納得感のある経営」

とはどのようなものでしょうか?それは、一貫性のある方針なのです。

それでは、その一貫性とはどこからもたらされるものでしょうか?

 

実は、それこそが理念の力です。

理念を大事にしていない組織は、大きな意思決定に一貫性がありません。

逆に理念を大事にしている組織は、

小さなことから大きなことまで一貫性があります。

 

だから、大きな失敗を未然に防ぐことができます。

それでは、理念とは何でしょうか?

理念とはその組織が本当に大事にしている、

普遍的な価値観のことだと思います。

時代が変わろうと、市場が変化しようと、

「自分たちはこれだけは大事にしていこう、こんな未来を目指そう」

という事ではないでしょうか。

 

耳障りの良い、抽象的な言葉に注意せよ

先ほど例に揚げたワタミがどのような理念を掲げていたでしょうか

ホームページで確認すると「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」

これ、一体何のことか判らない。全く実在感がありません。

 

居酒屋と何の関係があるのでしょうか?

単なるブラック企業との烙印を押されたことに対する、

株主への言い訳のようにしか感じられません。

これが職員の行動規範になるのでしょうか?

 

ならないから、こんな状況なのでしょう。

人の組織の事を言っている場合ではありません。

一度、経営理念を見直す、点検する、

理念がないのであれば、部下の方々と議論しながら作り上げては如何でしょうか?

ここから、新しい未来がスタートして行きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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