韓国が驚くべき医療成果をあげています。この数字は5年生存率の韓国医療の実績です。
数字を見せられると、韓国医療の勝利!凄まじい成果と考えられます。
何しろ100%にあと僅かなのですから。
ところが、この数字には前提があります。
韓国医療界が健診を進めると甲状腺ガンがどんどん発見されました。
その結果、韓国では甲状腺ガンが急増しました。
しかし、不思議なことにこの急激な変化の原因がわかりませんでした。
つまり、国民の健康状態は変わらないまま、甲状腺ガンの発見率だけが急増したわけです。
ところが、甲状腺のガンはもともと進行が遅く、死に至らないガンであることが判明したのです。(*1)
患者が生存できたのは優れた医療技術のおかげではなく、
そもそも甲状腺ガンが死に至らないガン(これを非致死性のガンと言います)だったのです。
その結果、実際には多くの患者が手術を受け、侵襲に苦しみ、
そしてその苦しみに見合うだけの健康結果も得られなかったと言います。
世界的に見て、韓国は過剰診療と指摘されています。
憤りを感じるのは僕だけでしょうか。なぜ、この事実がもっと大きく報道されないのでしょうか?
世の中に流されている医療情報を無防備に鵜呑みにすることが危険であることがわかります。
正確な情報が存在し、そこに誰もが自由にアクセスすることができ、
あなたが熟考すれば、最適な医療を選択ができるというのが、これまで議論してきたことです。
今回の話は、前提条件を更に深く探求した上で、最適な選択について考えていきます。
これまでお話ししたように、医療は常に不確実性を伴います。
しかし、この状況に権威者たちが自ら問題視し始めました。
ハーバード大学医学部教授のジェローブ・グループマンによると、
「科学は大いに進歩してきたが、残念ながら医学の世界の多くはいまだにグレーゾーンにある」と医療の不確実性を訴えています。(*2)
ですから、あなたはこのグレーゾーンの中で医療を選択しなければなりません。
医療のグレーゾーンをどのように泳ぎ切るか?
先のグループマンによれば、医療の世界はグレーゾーンで
「誰が言うことが正しいのか?と言う疑問に対して、多くの場合、その答えは専門家の側にあるのではなく、
あなた自身の中にある」と言っています。
そこで、あなたは「はて?」と思うでしょう。さて、僕たちは一体全体、どうすればいいのでしょうか?
僕たちはグレーゾーンの医療の中をどのように泳ぎ切ればいいのでしょうか?
医療の選択には、選択する我々の側(患者側)にも考慮すべき変数があります。
人の考え方はそれこそ千差万別なわけです。
例えば、医療の力を強く信じていて、何とかすれば病気を完治する方法があると考える人がいます。
その一方で医療について疑いを持っている人がいます。このタイプの人は、
慎重に医療を選ぶでしょうし、失敗したくないという気持ちが優位に働き、リスク回避的な行動をとるでしょう。
また技術指向が強い人は、新薬や新しく開発された治療法を積極的に試そうとするでしょう。
また、自らの状態をより良い状態、最高の状態に持っていきたいと考えている人がいます。
その一方で、全て自然に任せたい。できるだけ何もせずに薬は最小にして人間本来の自然の治癒力に期待したいと考える人がいます。
そのどの考え方も否定することは出来ないのです。
「全ての人に合うフリーサーズ」の治療が存在しないという事です。
そこは、個人の価値観と大きく関わる問題だからです。
あなたが、自然志向の人であれば、医師がどれだけ最新の治療法を進めても納得しないでしょう。
またあなたが技術志向の人であれば、「標準的な透析」に納得しないでしょう。
もっと、アウトカムが上がる透析医療を追求し、それを選択し始めるでしょう。
つまり、重要な変数として、患者側の価値観に基づかなければ、納得した医療が成立しないということになります。
あなたは、医療を信じる人でしょうか?医療を信じない人でしょうか?(信じる者と疑う者)
あなたは技術志向でしょうか?
それとも、できるだけ治療を避ける自然主義志向でしょうか?
(技術指向か自然主義指向)最高の状態に向かうためには何でもやるという、
最大化志向でしょうか?それとも、出来るだけ医療行為は少ない方がいいという最小化志向でしょうか?(最大限主義者か最小限主義者か)
このように、医療が例えグレーゾーンであったとしても、
あなたがあなたの価値観に基づいた選択をしたときに、
あなたにとっての医療は納得感のある、最適なものになるでしょう。
様々な方法論、ツールはたくさんありますが、それを選択するのはあなたです。
そして、その気になれば僕たちは沢山の情報をもとに判断することができるのです。
重要なのは、選択というカードを切るのはあなただという事です。
*1 ダン・ヒース.上流思考,ダイアモンド社,2021,219p
*2 ジェローム グループマン・パメラ ハーツバンド.決められない患者たち、2013,293-295