簡単に職員を採用してはいけない。
ホスピタリティという言葉を知っていますか?ホスピタリティの語源はホテルであり、世界最古の病院と言われる病院はホテル(現在のホテルと当時のホテルは違いますが)からスタートしています。つまり、ホテルとホスピタルのルーツは同じという事です。ホテルもホスピタルもその本質はホスピタリティにあるということです。
私はホテルのサービスが病院のサービス向上の参考になるだろうと予測したのも、ホスピタリティが原点にありました。一流ホテルを研究対象に選択したのは正解でした。サービスは人を介してお客さんに届けるものです。
サービスは無形なものです。形がありません。
人を介してサービスが顧客に届けられます。
つまり、建物やシステムがどれほど良くても、「人」がよくなければ届けるサービスは限界があるという事になります。
良いサービスを作り上げるのはやはり「人」が極めて重要ということです。
まあ、当たり前と言えば当たり前です。
よく「人作り」という言葉が有る通り、人を育成する事はとても重要な事です。
しかし、本当に人作りが出来るのでしょうか?恐らく出来る場合も有るでしょう。
その一方で、手間ばかりかかり、期待した結果にならないという事はよく有る事ですし、管理者のほとんどは人の悩み、部下の悩みで終始しているのではないでしょうか。
医療機関の悩みもこれと同じです。
より良いサービスの作り方
それでは、より良いサービスを提供するためには何を、どうすれば良いのでしょうか?
例えば、以前ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーの当時の日本支社長、高野登さんとお話しする機会があり、その中でどのように最高品質のサービスを作り上げているのか、その秘訣についてうかがったところ
その答えを要約すると、
人を採用した後で育成するのではなく、採用時に適切な人を採用し、そして適切に教育し、育成するということで最高のサービスを作り上げているということでした。
なるほど、医療機関の場合はとにかく看護師不足、医師不足ですからとりあえず、最初に頭数をそろえようという意志がはたらきます。それから、玉石混合ですがそこから育成し一人前にするという方法が一般的でしょう。
これが間違いだと言うつもりはありませんが、組織目標が大きければ大きいほど、管理職の悩みは計り知れないという事態になることは確実です。
だから、病院管理者の一番の悩みはと聞くと、そのトップは「人の問題」と答える人が圧倒的に多いのが現実です。
その結果どうなりますか?人が少なかった時よりも、職員間のトラブルが増え、患者さんからのクレームが増え、サービスのレベルは低下し、その結果管理者のあなたはストレスが増え続ける。
それを変えようと躍起になり、その部下を呼んで注意し、そしてまた注意し、そしてまた注意する。
しかし、事態は一向に改善しない。
最初は人が少ないと文句を言っていた職員達は、手のひらを返すように、「何であんな人採用したのですか?採用する方が悪い。本当に人を見る目がない」と言いたい放題の状態に。
こうなると、あなたのストレスは頂点に達します。
現場は「あれほど人が少なくて困ってると言ってたじゃないか?」と
このような状態に陥ると、出口がないように感じてしまいます。
つまり、職員の頭数を満たすという考え方では無く、よいサービスを作り上げるために、相応しい人を採用するというように、考え方を変える必要があるのではないでしょうか。
社員の採用に携わり初める時「採用するか、採用しないか、決められるまで面接を終わらせてはいけない」と言う言葉にぶつかりました。
採用担当として新人だった私は、その言葉を信じて約20人の新卒者とそれぞれに1時間あまりの時間を費やしました。
その結果、得た経験が2つ有ります。
面接者の『素』は30分を過ぎた所から現れる。
そして会社の利益でなく、その人がどの様に生きる事が幸せなのかを真剣に考えれば、必ず応えが返ってくるということ。
とても疲れます。とても大変な作業です。
しかし人事とは人の人生を左右する、とても責任重大な仕事です。
その仕事に携わる以上、相手がどうあれ、こちらは真剣に人生を掛けてぶつからなければいけないと思うのです。
その姿勢に響く心を持つ人であれば、その時は未熟であってもその後は何事も育む事が出来る。苦難を共に乗り越えてくれる。
そう信じています。
全ては入り口で決まる。
すなわち、その入り口の門番をどう選ぶかが、将来的により良いサービスを提供できる組織に育む事が出来るか否かの肝になると思うのです。
心で人と対峙すれば、心ある人は必ず好転する。
より良い組織、より良いサービス提供が出来る人を育むために奮闘する日々を振り返る度、その重責に背筋が伸びる日々を送ることになります。
自ら自分自身の健全な心を育む事に苦悩する事にもなります。
結局、成長させてもらっているのは、我々なのです。
先生のメッセ-ジにすべて感動しました。