なぜ私たちは怖がったまま動けないのか?

こんにちは、櫻堂です。

これまで患者さんの人生が大きく変わる瞬間を、私は数えきれないほど見てきました。

その変化の裏には、必ず「恐怖」と「一歩踏み出す勇気」があります。

今日は、その核心に迫る話です。

恐怖は現実そのものではない

私は仕事の場面で恐怖心をコントロールするのは得意なほうだと考えていました。

何しろ私が進めてきた事業はベンチャーですから危機との隣合わせ、危機の連続だからです。

(もし、ベンチャー事業を始めた私のキャリアヒストリーをお知りになりたい方は、

私のポッドキャスト「誰もやらないビジネスの作り方」をお聞きください)

しかし、どうしても克服できないものが一つだけありました。

笑わないでくださいね。

少し恥ずかしいのですが、ジェットコースターです。

家族とテーマパークに行くと、私以外の家族3人は嬉々と最初にジェットコースターに向かいます。

一方私は、足がすくみ、入口で見送るのがいつもの光景でした。

「あれに乗ったら生きて帰れない」

――心の底からそう思うほどの恐怖でした。

いつも体調がすぐれないから乗ってきていいよと言い訳をしながら、

本心は恐怖でいっぱいで、乗るなんてとんでもないと避けて通ってきたのです。

そんなある日、人生の転機のような瞬間が訪れます。

家族に半ば強制的に列に並ばされてしまいました。

しかも空いていたのはジェットコースター最前列だけ。

逃げられない状況でジェットコースターの最前列に座り、なぜか私はこう思ったのです。

「これは“乗せられる乗り物”ではなく、“先頭で自分が操縦している乗り物”だと思ってみよう」

すると、不思議なほどに恐怖が薄れたのです。

今でもあの時の気持ちがわかります。

恐怖感は一瞬で消え、むしろワクワクする気持ちが湧いてきました。

最前列から風を切る感覚、視界の広がり。

そしてジェットコースターを自分で操る感覚、あれほど怖かったはずの乗り物が、

まったく違う爽快感と躍動の体験へと変わっていたのです。

恐怖は現実そのものではなく、“自分がどの位置に立っているか”で決まると。

人生が動き始めるのは、たった一度“立つ位置”を変えた瞬間

この体験は、実は「行動科学」の領域で説明することができます。

しかも、伝統的な理論です。人は「考えが変わるから行動が変わる」と思いがちです。

しかし、科学的にはその逆方向の力がとても強いのです。

例えば、

•認知的不協和理論(Festinger)

行動に合わせて、心のほうが整合性を取りにいく。

•自己知覚理論(Bem)

自分の行動を観察して「自分はこう感じているのだ」と認知をつくる。

•身体性認知(Embodied Cognition)

姿勢や動作が感情を変える。

これらが示すのは、次の一点です。

行動が先で、心は後から変わる。

そしてこれは、透析患者さんが主体性を取り戻す時に起こる現象と同じなのです。

変わるのは現実ではなく、「あなたのハンドルを握る手」

透析を始めようとする患者さんは、しばしばこうおっしゃいます。

•どこへ向かうのか分からない。

•体調がどうなるのか不安。

•とうとう人生が終わった。

これはまさに、ジェットコースターに乗る前の私と同じ状態ではないでしょうか。

しかし一歩踏み出し、自分の身体のことを理解し、医療者と対話を始めると、

驚くほど変化が訪れます。

「私は自分の健康をつくる側に回っている」

「透析はただ“受けるもの”ではなく、人生を立て直すための“手段”なんだ」

こうした認知の変化が、恐怖を力へと変換し始めるのです。

ここにも行動科学の法則が働いています。

恐怖を消す3つの科学的レバー、位置・意味・経験

私の体験と患者さんの変化を見てきた経験から導かれる、“恐怖を「外す」3つの鍵”があります。

① 自分の立つ位置を変える(Position)

ジェットコースターで言えば“最前列”。透析で言えば“主体的に学ぶ位置”です。

理解するだけで恐怖は半分消えるのです。

② 意味づけを変える(Meaning)

「乗せられる側」から「操縦する側」へ。

透析なら、“治療される立場” → “自分で健康を取り戻す立場” へ。

意味づけが変わった瞬間、人生のハンドルが戻ってきます。

③ 小さな成功体験を積む(Micro Success)

自己効力感(self-efficacy)は“小さな成功”によって強固になります。

セルフ透析を学んでいく患者さんが数週間で顔つきまで変わる理由はここにあります。

小さな一歩で、人は別人のように強くなれる。

もし今、透析や体調のことで不安を抱えている方がいたら、私はこうお伝えしたいと思います。

あなたが感じている恐怖は、“弱さ”ではありません。

それは、新しい世界へ踏み出す前にだけ現れる、自然な反応です。

しかし、その恐怖には、

•あなたの立つ位置

•あなたが与える意味

•あなたの小さな行動

この3つだけで、大きく変わる余白があります。

恐怖を外すというのは、恐怖と戦うことではありません。

“自分の人生のハンドルを握り直すこと”なのです。

その瞬間、患者さんたちの表情は変わり、行動が変わり、

人生の視界は一気に開けていきます。

私たちは、患者さんたちのその一歩を支える存在でありたいと願っています。

最後に

今日あなたが変えるべきものは、行動ではなく“意味づけ”

あなたの人生は、あなたが運転した時に最も美しくなる。

 人生は、ときに大きく揺れ、先が見えない瞬間もあります。

それでも、その“乗り物”の主導権は、いつでもあなたの手に戻すことができます。

恐怖とは、あなたを止めるためのものではありません。

あなたが、新しい自分の人生へ進むための入り口なのです。

そして大切なのは、小さな一歩、小さな選択、小さな行動

──その積み重ねが、気づいたときには大きな人生の転換点になっています。

私たちは、透析という日常の中で苦しみや制約を抱えながらも、

前へ進む力を失わずにいる多くの患者さんを見てきました。

人は、自分の人生の舵を握り直した瞬間、驚くほど強く、

美しい存在になるのだという事例を私は何度も目撃してきました。

どうか忘れないでください。

あなたの人生は、あなた自身が運転する時にもっとも力を発揮します。

そしてその運転席に戻るための道のりで、私たちは決してあなたを一人にしません。

これからも私たちは、あなたが自分の人生を“運転する”ためのサポートを、

徹底して続けてまいります。

いつでも、どんな時でも、あなたの隣で。

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