透析が必要になったとき、医師が患者さんに告げる言葉はほとんど同じです。
医療者はさまざまな情報を知っていますが、患者には伝わりません。
これを専門的には「情報の非対称性」と呼びます。
だからこそ、「自分の人生に合った透析」を考える前に視野が狭められてしまうのです。
つまり、最初から視野狭窄に陥っているわけです。
それだけではありません。
病院によっては、透析を受ける転院先も医師に誘導されてしまいます。
この現代においても医師の勧めに抗うことは極めて難しいと思います。
私も様々な場面で、医師の推奨を拒んだ経験を持っています。
その時に医師によっては捨て台詞を残すような言い方をする人もいました。
私は医療分野を専門に仕事をしてきましたから、そこで対峙することもできましたが、
多くの患者さんの場合は、仕方がなく応じることになるでしょう。
しかし、それではご自身の人生の責任をとることはできません。
「これまでの透析」ありき」という思考の罠
透析は命を支えるために不可欠な治療です。そしてそれは、あくまで「手段」であって「目的」ではありません。
しかし現実には、透析導入の段階から「透析はしなければならない」
という前提を植え付けられてしまうため、患者さん自身も「とりあえず透析をすれば大丈夫なのか?」
という問いにとどまってしまうのです。
でも、本当はもっと大切な問いがあるはずです。
それは、「自分はこれから、どんな人生を望むのか?」という問いです。
透析導入は、人生を生きる条件が変わるタイミングではありますが、
その条件とご自身の人生の希望やライフスタイルの「最適化」を図るという発想がまさに必要な時なのです。
本当の出発点は「望む未来」
あなたが本当に望んでいるのは、透析そのものではありません。
•これからも仕事を続けたい
•仕事をして経済的に豊かになりたい、なる必要がある
•子どもの成長を元気に見届けたい
•夫婦で旅行に行きたい
•趣味や仲間との時間を大切にしたい
•家族に迷惑をかけず、できるだけ自立して過ごしたい
こうした「未来の姿」そして「望む結果」が先にあり、そのために透析という手段が必要になるのです。
つまり、「透析をすればいいのか?」ではなく、
「その未来を叶えるには、どの透析がふさわしいのか?」が問われるべきなのです。
難しく考える必要はありません。ただ、あなたが望む将来、望む結果を明らかにした時に、
あなたの人生は大きく変わり始めるでしょう。
そのために、積極的に情報を収集してほしいのです。
セルフ透析で人生が変わった人の中には、このような患者さんがいました。
「病院は何も教えてくれなかった、どこにも情報がなかった、
情報を何度も何度も検索して、セルフ透析施設を見つけた。
これがきっかけとなり、健康状態が劇的に変わった。
これまで息切れして少しの距離も歩けなかったのが、歩けるようになりました」
このエピソードは、現在の透析の医療界を象徴しています。
また、ある患者さんは、友人がセルフ透析で透析を行っていて、
その人の紹介でセルフ透析を行うようになり、これまで趣味のゴルフができなかったのが、
今では毎週ゴルフを楽しむまでに状態が変化したと言います。
あなたが、より良い人生を歩むためには、医療機関からだけの情報ではあまりに情報が少なすぎます。
あなただけではありません。
患者さんを取り巻く世界がこのような状況です。
ですから、何もしなければ、現在の状況から逃れることはできないでしょう。
しかし、現在の状況を変える一歩は、難しくありません。
スマホやP Cを起動し5分で情報を探索することができます。
現在は情報化が飛躍的に進んでいます。あなたは単に、指先を動かすだけです。
つまり、積極的に情報をとりに行く姿勢こそが重要ということです。
行動を導くのは「未来からの逆算」
未来を描き、そこから逆算して今の行動を選ぶ――
これは人生のあらゆる場面で自然に行っていることです。
学びたいから大学へ行く。/夢の仕事に就きたいから資格を取る。/健康でいたいから運動を始める。
透析も同じです。「望む未来」を明らかにしたとき、初めて「どんな透析を選ぶべきか」が見えてきます。
未来を描くことは、透析を「義務」から「手段」へと変える力を持っているのです。
今や、さまざまな透析が可能となっています。
透析を人生のダウンタイム(停止時間)にしない
では、未来から逆算したときに浮かび上がる課題は何でしょうか。
多くの場合、それは「時間」です。週3回、1回4時間。
通院時間も含めれば、人生の膨大な部分が透析に費やされます。
つまり、この時間をベッドに横たわり何もしなければ、この時間はあなたにとっての
ダウンタイムになってしまうでしょう。
この時間をどう取り戻すかが、人生の質を左右します。
ここでセルフ透析という選択肢が意味を持ちます。
セルフ透析は、病院のスケジュールに縛られず、自分の都合に合わせて透析を行う方法です。
施設にはWi-Fi環境が整っており、透析中に仕事や学びを続けることも可能です。
「時間を取り戻す力」こそが、セルフ透析の最大の価値なのです。
もちろん、すべての人に万能ではありません。
けれども、「望む未来」と照らし合わせたとき、患者さんにとって
セルフ透析が有力な選択肢となる可能性があることを知りました。
当たり前を疑うことから始めよう
透析導入時に「透析はしなければならない」と言われると、
多くの人が「通院透析しかない」と思い込んでしまいます。
しかし、そこで一歩立ち止まり、当たり前を疑ってみましょう。
•本当に透析はそれしか方法がないのか?
•自分が望む未来にもっと合ったやり方はないのか?
この問いを持つことが、未来を切り拓く第一歩となります。
「透析をすればいいのか?」という疑問は、決して間違いではありません。
けれども、それは本当の出発点ではないのです。
問い直すべきは、「私はこれから、どう生きたいのか?」ということ。
その問いを持つ勇気が、あなたの未来を形作ります。
透析は「命をつなぐ義務」から「望む未来を叶える手段」へと変わります。
そして、その未来を支える一つの答えとして、
セルフ透析という選択肢があることを、どうか心に留めていただきたいのです。
(OASIS HEART 問いかける勇気——透析は「しなければならないもの」なのか?Vol.113より)