突然ですが、あなたにお聞きしたいことがあります。
もし、あなた自身や、あなたの大切な人に、透析が必要だと告げられたら…。
その瞬間、何を一番に思い浮かべますか?
「これまでのように働けるのか」
「自由な時間が無くなるのでは」
「家族に迷惑をかけてしまうのではないか」
そう。透析とは、単なる“治療”ではありません。
生活のかたち、人生の輪郭そのものに影響する“人生の転機”なのです。
そして多くの人が、その瞬間に“諦め”を覚えてしまうのです。
仕事、夢、役割、そして、自分自身を。しかし、本当に全てを諦めなければならないのでしょうか?
透析が主役から脇役になる
私はこれまで、セルフ透析を選んだ多くの方々と日々接してきました。最初は戸惑い、ためらい、「自分にできるだろうか」と不安に包まれていた人たちです。
ところが、しばらくすると彼らは、ある日ふと、こう言うようになるのです。
「透析が“生活の中心”だったのが、“生活の一部”になった気がします」
「ようやく“自分の人生”に戻って来られたんです」
「普通の生活ができるようになったのが嬉しいです」
これは、誇張でも脚色でもありません。
実際に起きている、患者さんたちの“変化の物語” です。
「仕事を辞めるしかないと思っていた」——でも、違った
セルフ透析の大きな特長のひとつは、「時間の自由」です。
決まった曜日・時間に通うのではなく、自分で透析の時間を選ぶことができる。
このことが生活にもたらす変化は、想像以上に大きいのです。
ある40代の男性は、こう話してくれました。
「透析と仕事の両立なんて無理だと思っていた。
それが今は、朝8時に施設に来て透析をして、
9時には透析をしながらパソコンで仕事を開始しています。
疲れる日もあるけど、充実しています。
“病人”じゃなく、“社会の一員”として過ごせている感覚があるんです」
別の女性は、こう言いました。
「パートを続けたかった。
でも普通の透析じゃシフトに入れなくて…。
辞めざるを得なかった。
社会人として、そして女性としての人生も諦めざるを得なかった。
しかし、セルフ透析にしてからは、時間を合わせられるので、週3日でも働ける。
何より“誰かの役に立っている”と思えることが嬉しいんです」
これは、ただの“便利な仕組み”の話ではありません。
多くの人の人生を取り戻す選択肢が、確かにここにあるということです。
データが裏づける「実感」——数字が語る、確かな手応え
このような声を、感情的な体験談と片づけないでください。
私たちは、実際にセルフ透析利用者に対するヒアリング調査を行いました。
結果は、予想を上回るものでした。
・59%の方が「体調が改善した」と回答
・そのうち約半数が1カ月以内に変化を実感
・「悪化した」と回答した方はゼロ
・食事制限を気にしなくなった人は32%から77%に増加
・時間が自由になって仕事や生活が変化したと感じた人は、過半数を超えました。
ある人は「透析後の倦怠感がほぼ無くなった」と語り、
またある人は「自分の時間を計画できるようになって、
家族との夕食が毎日とれるようになった」と話してくれました。
この数字の背景には、セルフ透析が提供する長時間・頻回透析という
質の高い治療が関係しています。
これにより体内の老廃物除去が安定し、生活の質(QOL)が向上したと考えられます。
この事実が全てを物語っています。
立ち止まって考えてください。
これまでの透析を続けていれば、
・体調が悪い、
・合併症のリスク、
・透析中には痒みや足の攣り、
・体力の衰え、
・食事の制限、
・そして健康寿命が短い、
・そして仕事に制限がかかり、
・生活の自由も制約される
こう考えるとセルフ透析を提供するシステムそのものの結果=アウトカムは別物です。
賢明なあなたなら、少し改善するというレベルではないことをわかってくれると思います。
ある患者さんはこう語ってくれました。「普通に生活し、普通に生きられることが何よりも嬉しい」と。
「私だけじゃなかった」——社会的証明が示す安心と現実
さらにお伝えしたいのは、このセルフ透析という選択肢が、
すでに多くの人々に選ばれている現実がある、ということです。
日本国内では、「仕事と治療の両立」を望む現役世代の間で、
その需要は確実に高まりつつあります。
また、北欧諸国や米国では、「自分の人生に責任を持つ」
という価値観とともに、セルフ透析が標準的な選択肢として定着しています。
さらに、日本透析医学会でも近年、
「患者の自己管理能力を高める透析モデルの重要性」が議論され始めています。
つまり、これは一部の特別な人の話ではなく、
「社会としてもこれから必要とされる新しい医療のかたち」なのです。
最後に。これは、あなたの物語であり、これからの社会の物語でもあります
私たちは、セルフ透析を“新しい治療”としてではなく、
これからの社会のあり方を映す「生き方の選択肢」として届けたいと考えています。
そして、あなたが「まだやりたいことがある」と願うなら、
その願いを支える医療が、確かにここに存在していることを知ってほしいのです。
変化は、思いがけない形で、すぐそばにあります。
そして、すでにそれを選び、生き方を変えた人たちが、あなたの一歩を待っています。
(月刊ニューズレター Oasis Heart 選択の科学Ⅲ-⑤より)