——でも、あなたには“抜け道”がある
今日は、なぜ多くの患者さんが「変わりたいと思っているのに、変われないのか」について、少し掘り下げてみたいと思います。そしてそのうえで、“どうすれば変われるのか”、その道筋について話させていただきます。
「セルフ透析って気にはなるけど、自分には無理だと思っている」
「やってみたい気持ちはあるけれど、踏み出す勇気がない」
そんな声を、私たちはたくさん聞いてきました。
驚くべき事実があります。
今、透析を受けている多くの方が、“不満がある”と感じています。でも同時に、“このままでも仕方ない”とも思っている。
そんなジレンマの中で、日々を過ごしている方が少なくないということです。
なぜ多くの人は“満足していないのに” 変わらないのか
多くの透析患者さんが、心のどこかで「このままでいいのだろうか」と感じています。それでもなお、現状を変えようとしない。
なぜでしょうか?
その理由の一つは、“慣れ”と“依存”にあります。これはまるで、「思考を止める麻薬」のようなものです。
決まった曜日に通い、与えられた時間に横になり、何年も同じやり方を繰り返す。
それは安心感をくれる一方で、「自分で考えること」「選ぶこと」から、知らず知らずのうちに遠ざかってしまうのです。
そして重要なのは、現行の維持透析システムそのものが、構造的に“自立”を促さない設計になっているという事実です。
患者は“ケアされる存在”として扱われ、自己決定や主体性を発揮する場面はほとんど与えられません。
自己決定を発揮できない状況というのは極端ですが、自由を剥奪された状態と言えます。
その一方で、「守られているから大丈夫」「面倒なことはスタッフに任せておけばいい」
——そんな感覚が、知らないうちに「可能性の芽」を摘んでいるのです。
その感覚の奥には、“見えない束縛”があります。
気づかないうちに、人生の自由度や選択肢を、誰かに委ねてしまっている。
それが、“変わりたいのに変われない”というジレンマの正体かもしれません。
慣れと依存が、生きる力を奪うこともある
透析は長く続く治療です。いつもの曜日、決まった時間に、何年も通い続けることが習慣になります。
こうした中で、多少の不満があっても「このやり方が一番安全なんだ」と自分に言い聞かせてしまう。
それはある意味、とても自然なことです。
でもその“慣れ”が、“自由を失う原因”になることがあるのです。
例えば「もっと体調を整えたい」「仕事を続けたい」「旅行に行きたい」
と思っていても、「今の透析では無理!」とどこかで諦めてしまう。
それは、今のやり方が悪いのではなく、変わるきっかけがないまま時間が経ってしまっただけなのです。
あなたのせいじゃない。 変われなかったのには理由がある
ここで大切なことを伝えたいのですが、「変われなかったこと」は決してあなたの責任ではないということです。
決して、ご自身を責めないでください。
私は医療システムを専門的に研究してきた見地から、あなたのせいではないということを論理的に説明します。
これまでの透析医療は、“管理される患者”を前提に作られてきました。
スタッフが準備し、指示を出し、患者はベッドに横になる
——その構造の中にいると、「自分で考えて決める」という意識は育ちにくいのです。
(つまり、制度設計がそのようになされてきたのです。これが日本の透析のシステムの原型です)
また、多くの施設では「セルフ透析」に限らず、在宅血液透析や
長時間透析といった選択肢そのものが提示されないまま、“他に方法はない”と、
無言の前提の中で治療が続けられているのが現状です。
そして「みんながやっているから安心」「多数派だから正しい」
——こうした感覚は、心理学で“社会的証明”と呼ばれています。
不安や未知に直面したとき、人はつい周囲の行動に判断を委ねてしまうのです。
私たちは、この構造を静かに変えたいと思っています。
患者さんが「こうありたい」と思う人生を治療によって奪われるのではなく、
治療によって支えられるものにしたいのです。
セルフ透析を選んだ人たちの変化
実際、セルフ透析を始めた方からは、驚くほど多くのポジティブな声が届いています。
「59%の方が“体調が改善した”と答え、約半数が1カ月以内に変化を実感した」
「食事のストレスが減った」「倦怠感が少なくなった」「生活にリズムができた」
そして何より多かったのは
——「“病人”じゃなくなった気がする」という言葉です。
私たちはこれを、単なる“治療のスタイル”ではなく、“生き方の選択”として届けたいと考えています。
あなたにもできる、変化のステップ
では、どうすれば“変われる”のでしょうか?
ここでは、実際にセルフ透析を始めた方々が歩んだステップを紹介します。
・まずは施設を見学してみる
→ 「話だけでも聞いてみたい」その気持ちで十分です。
・スタッフや医師と相談する
→ どんな不安があるか、何がネックなのか、率直に話してみてください。
・トレーニング開始
→ ゆっくり、丁寧に、自分のペースで始められます。決して一人にはなりません。
・自分の時間で透析を組み立てる
→ 午前中に透析、午後は買い物や仕事。可能性が広がります。
・体調と生活の変化を実感する
→ ほとんどの方が、数週間で「違い」を感じ始めます。
最後に——あなたは、まだ間に合います
人は誰でも、「変わりたい」と思いながら、なかなか一歩を踏み出せません。
でも、その一歩が、これからの人生を大きく変えることもあるのです。
あなたの中にある“違和感”や“もう少しこうなれば”という気持ち。
それを無視しないでください。あなたには、変わる力があります。