知識欲はいいのだが
クライアントや、私の教え子が所属している病院の話を聞く機会が時々あります。
その話の中で、最近気になる話題があります。
その気になる話とは、患者さんとの意思疎通がうまくいかない職員が多いという話です。そして、その数がどうも増加しているとの事です。
状況に対応が出来なかったり、患者さんに寄り添う事が出来ない看護師、
上から目線で、ともすると患者さんを見下した様な態度をとる技師、
患者さんの質問に真摯に答えないために、患者さんをいらつかせてしまう事務。
枚挙に遑がないとはこの事です。
資格をもっているというだけで、ある種の特権階級的奢りがある職員は確実にいます。
プロとしてのプライドは必要だと思います。そのプロとしてのプライドをはき違え、
奢(おごり)りとなるとどうでしょう?
人に対する配慮、誠実さ、謙虚さという日本人固有の美徳から遠ざかってしまいます。
私たちは、最近日本人の遺伝子の中の美徳を再確認したはずです。
奢りというマインドセットが何をもたらすのでしょう。
その思考態度が言動となり、患者さんのクレームに発展したり、結局はサービスの水準を落とす等
の元凶になっています。
間違った学習と間違った結果の関係
つくづく思うのは、コミュニケーション、リーダーシップやマネジメントといったテクニックや
最新のノウハウを獲得し、それを実行に移したとしても何とも解決出来ないということが
多いという事実です。
例えば、患者さんとの対話あるいは同僚や上司との対話の中で
「よし今度は習ったテクニックを使って、コミュニケーションを良好にしよう」
と考えたとします。
その一時期は改善効果が見られるもしれません。
しかし、99%その効果が長続きしないのです。
何故だと思いますか?
テクニックが古いから、
学習の仕方が悪いから、
習う人が間違っているから、
継続して学んでないから、
精神力が弱いから、
どれも違います。
私のクライアントの院長はコミュニケーション研修に職員全員に課し、
その研修を何度も実施してきました。
しかし、研修を受けて2日もすると、もう元に戻ってしまいます。
何度やっても同じ結果です。
こんな事をいやというほど経験した暁に、研修を辞めてしまいました。
諦めた院長は・・・
確かに、成果が上がらない研修に大金を投じるほど経営は甘くありませんから
院長の意思決定は正しいと思います。
それでは、何が原因でしょうか?
我々は、技術や知識の問題ではなく、「人間力」の問題だと考えています。
人には、自覚、想像、良心、意思という4つの人間独自の性質があると7つの習慣の
著者であるコビー博士は言っています。
この4つの性質を駆使すれば、人の内面に変化を起こす事ができます。
しかし、内面に訴えかることが出来ないあらゆる知識・技術は何も行動変化を
与える事ができないのです。だから結果が変わらないのです。
思えば、一般企業は入職時に1ヶ月〜3ヶ月という時間をかけて新人教育をします。
研修期間の間、読む、書く、聞くといった基礎的な事、職場のマナーや報告の仕方、
先輩や上司に対する配慮、仕事に立向かう姿勢、お客さんを迎える姿勢、等等、
様々な事を行って行きます。
もちろん製品の知識等もありますが、多くの時間を費やすのは
「人としてのあり方」についてです。
このような教育を積み重ねて行きます。
だから、人が成長します。
だから、人が創られて行きます。
「人間力」がキーワード
しかし、医療者は残念ながらこのような経験に非常に乏しいのが現実です。
病院という組織体においては、カリキュラムもなければ余裕もありません。
だから、その多くは悪く言えば放置状態が続いて行きます。
だからこそ、自分自身で「人間力」を高める努力をしなければならないのです。
自分自身でリーダーシップをとりながら、自分を成長させることが必要になります。
一見、遠回りのようですが、実はテクニックを習い憶えるよりもよっぽど早道なのです。